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シンガポールで少額訴訟を経験して

2017-10-13

おはようございます!菱沼です。

先日、Facebookにも記載をしましたが、10月4日にシンガポールで少額訴訟の調停を
経験しました。
Facebookでは裁判と書きましたが、正しくは裁判ではなく、調停です。
入居時に支払った2ヶ月分のデポジットが不当な理由により返還されないと
私がコンドミニアムのオーナに対して返還の少額訴訟をおこしたものです。

(1)何故このような事態になってしまったのか?
(2)どのような手続きが必要なのか?
(3)どのような内容の調停であったのか?
(4)反省点

と大きく4つに分けて、まとめておきたいと思います。
少しでもこの経験がシンガポール或いは海外で生活される方の一助になれば嬉しい限りです。

(1)何故このような事態になってしまったのか?

シンガポール国内のコンドミニアムの引越しに伴い、退去時にオーナーから多額の請求を
されたことが始まりです。

そもそも、この引越も契約更新を2年する予定(不動産エージェントを通じて合意済だった)
ものを、100シンガポールドル高い家賃で借りたいという人が出てきたので、100ドル
上げてくれないか?と意味不明の事を言って来たため、即座に退去する事を決めたことに
端を発しています。

では、何故多額の請求をされてしまったのか?を説明したいと思います。

まず、主だった請求の内容を箇条書きで記載してみます。

フローリングの隙間の修理
ワードローブの引き出しがスムーズでない事による交換
窓ブラインドの傷による交換
水栓トイレの流れが悪いことによる修理
水栓の錆による交換
シャワー設備の錆による交換
トイレットペーパーホルダーの錆による交換
バスタブの取手の錆による交換
バスタブ周辺のコーキングの劣化による修理
バスルームの大理石の傷による修理
窓がスムーズに閉まらない事による修理
ガスレンジの火がスムーズにつかない事による交換

他にも細々とあって合計4,686シンガポールドルの請求が来ました。
この内容を見て、改めて思い出して腹が立ってきました。。。
どう考えてもおかしいと。

通常、退去日にオーナーとテナント(私)、それぞれの不動産エージェントが立ち会って、
退去時の状況を見るのですが、実はここで私は相手側に隙を見せてしまいました。
仕事の都合で退去日よりもかなり早く次のコンドミニアムに転居しており、
住んでいたコンドミニアムは空き家になっていました。
その間シンガポールにいなかった事もあり、オーナーに鍵を渡してしまったのです。
これは、オーナーが次のテナントを探すに当たり、契約上、ビューイングを妨害しては
いけないという項目もある事、少しでも早く次のテナントが見つかれば良いという気持ちも
あった為です。
しかし、これが仇となってしまいました。
ある日、テナント候補のビューイングの際に、オーナーとオーナー側のエージェントが
細部に渡りチェックをしていたのです。そして、事前に業者を呼んで、交換やら修理やらの
見積書を依頼していたのです。
私は相当気を遣って生活をしており何かに傷をつけたり、破損をさせたりしていないので、
正々堂々と鍵を渡したわけですが、入居時に既にあった傷や錆などを全て請求される羽目に
なってしまったのです。
退去時にオーナーは一方的に内容を説明し、私は全く私の責任ではないと言い争う結果になり、
これでは拉致があかないと判断し、今回の訴訟に至りました。

(2)どのような手続きが必要なのか?

少額訴訟の手続きは至って簡単です。
STATE COURTS SINGAPORE
上記サイトから、Filing a claim at the Small Claims Tribunalsのページをクリックして、
訴訟内容(概略)を記載していきます。
訴訟額に応じて費用が違うのですが、①5、000シンガポールドル以下は10ドル、
②5,000から10,000ドルまでは20ドル、③10,001ドル以上
20,000ドルまでは訴訟額の1%が費用となります。
(少額訴訟は20,000ドル以内です。)
今回は②に当たりますので20シンガポールドルをクレジットカードで支払いしました。
また、訴訟に必要な書類が2つあります。
1つは、賃貸契約書、もう一つは印紙税の支払いコピーです。
この2つの書類は必ず必要です。それ以外にSupport Documentとして、証拠となるような
書類を追加できます。
全ての書類はPDFにして、STATE COURTSのサイトにアップロードしていきます。
こちらが書類をアップロードすると相手側にもEMAILで通知が行くのでどんな書類が提出
されたのか知る事になります。逆も然りです。

今回私が提出した書類は主に以下の通りです。
賃貸契約書
印紙税の支払いコピー
オーナーが請求してきた内容についての反論分
不動産エージェントの見解
賃貸契約書内に記載のある、経年劣化、摩耗に関する項目についての見解

オーナーが提出してきた書類は以下の通りです。
業者の見積書
テナントが悪いという見解
退去時に撮影した写真

それぞれに書類をアップロードし、調停の日を待つ事になります。
因みに私は調停の2日前に意図的に最後の書類をアップロードしました。
どうもアップロードの締切期限はないようです。

(3)どのような内容の調停であったのか?

ここからが、本題というか、気になるところかと思いますが。
この少額訴訟は、弁護士などの代理人を立てる事はできません。
必ず当事者が出席しなくてはなりません。また、当事者以外は法廷に入る事ができません。
ただし、法廷内は公用語の英語、マレー語、中国語、タミール語以外は通用しませんので
通訳が必要な場合は自費で帯同させる事ができます。(ただし、事前に申請が必要です。)
そして、冒頭にも記載しましたが、これは裁判ではなく調停になります。

法定に行くと、まず銀行などと同じように受付機械があり、自分の氏名と訴訟ナンバーを
入力し番号札のようなものを入手します。この番号が法廷の場所を示しています。
TVモニターにその番号が映し出されると、原告、被告共に係員が法廷(部屋)まで案内を
してくれます。到着すると中に、書記官がいてここで話し合いが行われるのです。
私もよく分かっていないまま臨んだのですが、書記官はあくまでも話し合いをリードする
役割であり、判断は下さないのです。

ここの場は裁判のように自己主張を続ける場所ではなく、あくまでもお互いの努力により、
双方歩み寄り、結論を導く場所ですと書記官から説明があります。
まずは、原告の私から内容を書記官に説明し彼らの請求が如何に不当であるかと訴えました。
その後、相手側も同様に話すわけですが、結局、双方、言いたいことだけを言い続けても
結論が出ないことは分かっています。

私は賃貸契約書に記載されている通り、経年劣化または摩耗はテナントの責任ではなく、
オーナーの責任であると主張する訳ですが、その経年劣化を証明する事ができませんでした。
コンドミニアム入居時に立会を行い、ダメージのある箇所について、ダメージ具合を紙に
記載をしたのですが、写真まで撮影をしていませんでした。また、初めての入居ですので、
生活に支障のない経年劣化(今回請求されたような)については、特に記載をしていません
でした。ここにも私の落ち度があります。
その後、双方主張は続くわけですが、最後は契約書のマイナーリペアの項目を基準に、
修理費が150シンガポールドルを超える部分は、オーナーの負担、それ以下はテナントの
負担という内容を基準に計算を行い、2,326シンガポールドルを私が負担する結論に
至りました。

内容には決して納得はしていないのですが、ここで出た結論には従おうと決めていた事、
これ以上訴訟に時間を費やすことができない事、半分取り戻せたら良しと決めていた事もあり、
サインをする事にしました。

双方合意すると、最後に審判官の部屋に移動し、ORDER OF TRIBUNALという書類が発行され、
双方がその書類にサインをします。
その書類には2ヶ月分のデポジットから、2,326シンガポールドルを差し引いた金額を
オーナーが私に1週間以内に支払うよう記載がされています。
私はその調停の後、すぐにインドネシアに出張に行ったのですが、数日以内に小切手が
自宅に送られてきました。

因みに、色々と書類をアップロードしましたが、書記官は書類を事前に読んでいません。
従い、当日、ゼロベースから話し合う姿勢で書類や心の準備をしていくことが重要です。

(4)反省点

*オーナーをしっかり見極めるべきであった。
 実際、入居する直前まで或いは入居してもオーナーと会うことはありませんので、なかなか
 選ぶことは難しいかもしれませんが、自分の長年の知人もいくつか物件を所有しているので、
 そういった物件を優先するかその知人の紹介を受けるなど手段は考えればあるように思えます。

*入居時に細かい点まで写真撮影を行い指摘すべきであった。
 先にも記載しましたが、初めての経験でそこまでする知識がなかった為、今後はしっかり
 実行していこうと思います。(さすがに次の転居先ではこの経験を踏まえ実行しました。)

*長期不在時に鍵を渡してしまった。
 人間不信に陥ってしまいました。
 世の中、そんなに甘いもんじゃないんだと、思い知らされました。
 (それでも、私はこれからも人を信じて生きていくと思います。)

聞くところによると、多くの日本人は、不当な請求をされても、時間がない、めんどくさい、
会社が負担してくれる、よく分からないから、等の理由で支払ってしまうようです。
確かに、面倒ですし、時間も掛かるし(このブログだって。。。)、時間で計算すれば、
マイナスかもしれません。
しかし、それによって不当な請求がまかり通るような世界にしてはいけないと思っています。
特にシンガポールは外国人が多く、外国人も快適に安心して住める国である事によって繁栄が
あるわけですから、少しでもこのようなケースが少なくなる事を願っています。
もし、周囲で同じような境遇の方がいらしたら、今回の件を是非シェアしてください。

今回、周囲の人からは、そんなことようやるわ、英語大丈夫なのか?、弁護士はいるの?と
色々とご心配をお掛けしましたが、不安はあったものの、私一人でやってみました。
私自身は結構楽しんでいた部分もあります。
勿論、請求されたことは本当に腹立たしいですが、新しい経験をする、知らないことを
知ることができるという意味では、どこかワクワクしていたわけです。
でも、2度としたくはありませんけどね。

菱沼 一郎

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